意義を通じたモチベーション: 意義のある仕事で従業員を維持・確保する

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2016年8月3日 アンディ・ネルソン
意義を見出すというのは、人生における偉大で、実存的な問いのひとつです。人によっては、全人生を通じて、自分の人生の目的について解明しようとし続けるでしょう。

意義または意味のある仕事は、従業員エンゲージメント(向上)の主要なドライバー(推進力)と考えられています。Deloitte’s Talent 2020シリーズの第四次レポートは、ほぼあらゆる主要産業と、グローバル地域の従業員、560人を調査しました。そこで判明した3つの主要なドライバーのうちのひとつが、意義のある仕事、でした。しかし、経営層は、従業員が彼らの業務において意義を見出すことをどのように手助けすればよいのでしょうか?

MIT(マサチューセッツ工科大学)の調査は、従業員がどのように自分の業務において意義を見出しているかをまとめています。従業員が業務中にその意義を感じられるのはどういう時か尋ねられた時、すぐれたリーダーシップについて言及している人はほとんどいませんでした。しかし、稚拙なリーダーシップは意義を損なうことにつながります。

組織の方針、取り組みに関連している満足度や、エンゲージメントと違って、意義はより個人的な概念です。従業員が意義を見出すためにとる主な手法は、自分の業務をじっくり振り返ることです。

意義を見出すことは、どの組織で働いているかという次元を超えており、業務を通じて人間らしさへのつながりを模索するという説明の方が近い、と研究者は発見するに至りました。組織はこの概念を、倫理、モラル、CSRといった、従業員の個人的な価値観と、ワーク・ライフを一緒につなぐような組織文化を構築することで、奨励することができます。

アクセンチュアが2016年に大卒者に行った調査では、組織で働いている際、自分にとって何が重要かという質問に対して、その92%が、社会的責任と回答しています。最近の卒業生は、社会にポジティブな変化を生み出し、彼らの人生に意味を加える組織で働きたいと考えているのです。

MITの調査に関わった一人、Dr. エイドリアン・マッデンは、「この点に成功した組織は、必要とする従業員を魅了し、保持し、やる気にさせやすく、将来にわたる持続可能性を構築し、人類が繁栄することができるような職場を作り上げていることが多い。」と述べています。

従業員が業務に意義を見出すための支援をすることは容易なことではないながら、雇用者は支援を試みるべきです。組織が従業員の意義の探求に協力的な環境を構築できているか確認するためには、5つの主なポイントがあります。

意義ある仕事かどうかの質を問うチェックポイント
従業員は業務にプライドを持っているか?
業務はクリエイティブで興味深いものですか?従業員は良い仕事をした際に称賛され、認められていますか?もし(この質問に対する答えが)イエスの場合、意義ある仕事のための基盤は構築できています。しかし、この後に続く質問の方が特に重要です。

従業員は、自分の業務が他者にとって重要だと感じているか?
従業員は、自分の業務が自分だけのためではなく、他者の役に立っていると感じたいと思っています。研究者はこの要素を自己超越(self-transcendent) と呼んでいます。

業務は従業員に時に複雑な感情を与えているか?
調査によって、意義ある業務の多くは、単に楽しいだけではないということが判明しました。時に、意義は、感情的な痛みや不安感を伴う仕事からもたらされることがあります。意義ある瞬間とは、単に従業員が積極的に関与していたり、幸せに感じていたりする時だけではなく、挑戦と奮闘に満ちているかもしれません。うまく処理できたと感じることや大義が、単に楽しく、かつ簡単な仕事以上に意義を与えていました。

従業員はかつて意義を感じる瞬間を経験しているか?
意義は継続的に発生するものとは限りません。しばしば、従業員のキャリアを通じて集中的に発生します。ある従業員はキャリア全体を通じて数度しか経験しないかもしれませんが、このような瞬間は、その従業員が自らの仕事と人生をどのように見なすかにおいて、永続的な印象を与えることになります。

従業員は自らの仕事を振り返る機会があるか?
意義は、業務の最中には実感できないことが多いものです。意義を感じられるのは、過去の業務を振り返った時のことが多いです。振り返ることで、従業員は自分の達成した仕事と、人生における価値観を紐付けることができます。

業務と私生活との間に関連があるか?
意義ある仕事は従業員の職業生活とともに、私生活に紐づいていることが多いです。彼らの仕事に感謝している友達や家族がきっといるでしょう。近しい友人や家族に触発され、彼らのために打ち込んだプロジェクトもあるでしょう。顧客との(接触する)経験が従業員の私生活の何かに関連することもあるでしょう。こういった瞬間の多くは、たとえ特にハッピーでなかったとしても、意義ある瞬間を構成することができます。
雇用者が従業員のために意義ある仕事を創出することはできませんが、雇用者は、従業員が意義ある瞬間を自分で見つけられる手助けとして、上記の質問のうちのいくつかをその従業員に問う、または、自問自答することができます。
意義を見出すことは個人的なことで、会社や組織がコントロールできないものではあれど、経営者が原因で意義を喪失することは起こりえます。

意義を喪失する原因
従業員の価値観は組織の価値観と一致しているか?
雇用者が価値を置くものと、従業員が価値を置くものとの間に断絶があると、強い意義喪失感につながる可能性があります。

従業員は高く評価されていると感じているか?
激務に対して、評価されていない、報われていないと感じると、従業員は自分のしていることは意味がないと感じます。なぜ、上司は従業員を評価しないのだと思いますか?

業務は無意味なものと見なされているか?
従業員の多くは、自分の仕事がどうあるべきか、自分たちが携わっている業務がどのような種類のものか、について、大体のところがわかっています。もし、自分の仕事観に相容れない業務がたくさんあると感じているようであれば、従業員は自分の業務を無意味なものと見なします。

全従業員は公平に扱われているか?
従業員は、公平に扱われていないと感じる時、仕事に意義を見出しません。公平でないとは、いじめ、昇進の機会がほとんどないこと、従業員を異なる基準で評価すること、などが含まれます。

従業員は自分の仕事においてどの程度裁量があるか?
多くの従業員が、上司がマイクロマネジメントをし、とても細かいところまで管理しようとする場合に、モチベーション及び満足度が下がっています。従業員は、聞き入れられない時、尊重されない時、コントロール感やパワーが漲る感覚を失い始めます。

どの程度、従業員が同僚とつながる機会があるか?
ソーシャルブレイン(社会的な人間関係を築く上で必要な脳機能)により、従業員もその他の人間と同じく、他者とつながる必要があります。孤立とその後に続く自己卑下は、強い意義の喪失感につながります。

従業員はどのくらいの頻度で感情的、または肉体的損傷のリスクに直面しているか?
多くの業務がある程度のリスクに直面しています。ほとんどの従業員はその職に就く際にリスクを認識しています。意義の充実感は、極端なリスク要因や、無駄なリスク要因によって減少します。
上記の質問事項は、全経営者と管理職が自らに問いかけるべきものです。これらの無意味感の原因となる多くの要素には、労なくして導入できる解決策があります。

意義にあふれた雰囲気を作り出す
前述の質問を問うことは、管理職に従業員と話し合いを持つことを要求します。話し合いは組織とその従業員が意義を作り出すために、どのように歩み寄れるかの出発点です。トップダウン・アプローチを用いて、経営層は組織の全階層にわたる話し合いを持つことができます。

組織の意義について話し合う
従業員は組織の目的と、組織がコミュニティに与えるポジティブな影響について、理解する必要があります。従業員は組織のゴール、将来計画、組織をミッション(達成)へ導く価値について、理解する必要があります。
経営層と管理職は本質的な、そしてオープンな会話を従業員との間に持つ必要があります。もし、組織が説明することと、組織が実際に行っていることとの間に乖離があれば、従業員は自分の仕事にほとんど意義を見出さなくなるでしょう。

仕事の意義について話し合う
(仕事の)意義を作り出す助けをするために、管理職は従業員が彼らの仕事が組織の価値と目的にどのように合致しており、どのようにその達成に寄与しているか実感できるように、支援する必要があります。従業員は、彼らの仕事が何らかの形で、自社が社会をよりよくすることに役立っていると知る必要があります。

タスクの意義について話し合う
仕事のほとんどはつまらないタスクで構成されています。ほとんどの人は、ペーパーワークやその他のルーティンワークを、彼らの真の目的から時間を奪うものとみなしています。従業員を、時に退屈なタスクがどれほど彼らの仕事や組織にとって重要なものなのか、理解する方向に導くのは管理職の仕事です。これらの小さいタスクがどのように組織の大きな意味につながっているかを考えることが大事です。

関係性の意義について話し合う
従業員は自分の仕事における意義を、自分の仕事で利益を受ける人との接点を持った時、同僚とポジティブな関係を持てた時に実感します。経営層と管理職は、従業員が自分の関わった顧客や同僚と接点を持っていると感じられるようにする必要があります。
経営層は、就業時間中に従業員がフィードバックを共有し、連帯意識を育む時間を作ることができます。経営層はまた、一連の顧客からの声をまとめて、従業員が自分の仕事と、その仕事の影響を受ける人を結びつけるようにすることもできます。
意義とは職場において難しい要素ですが、経営層は従業員が意義を見出す最大限の潜在的な環境を構築する手助けとなることができます。
本記事はHappy.comに掲載されたものを許可を受けてここに再投稿しています。

Andy Nelson

アンディ・ネルソンは心理学とメンタルヘルスの分野で学位を有し、人々が職業生活と私生活双方において成功と幸福を見出す支援に従事しています。 彼自身は、フィクション・アドベンチャーを執筆すること、良書を携えて公園で過ごすこと、最新の映画やテレビ番組を友人と鑑賞することに幸福を感じています。
出典元:http://cw.iabc.com/2016/08/03/motivation-through-meaning-retain-employees-with-meaningful-work/