CSR広報で避けるべき11の過ち

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2016年7月7日ウェイン・ダン

CSR広報は、価値と強い関係性がある。正しくやれば価値を生みだし維持することができる。失敗すれば価値を損なうか、価値を放っておく事にもなり得る。

しかしながらCSR広報はめったに戦略的に見られることがないし、価値の創出や維持という観点から見られることはほぼない。

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過去20年で私がビジネスと社会の接点の領域で経験した、よくある11の過ちを見てみよう。
これらの過ちは株主に価値を失わせるし、結果的に企業やステークホルダーにとって機会を喪失させることが多々ある。

1.”ごまかしの環境保護”

すでに我々は皆それを体験してきた: 情熱的な企業コミュニケーションを目にして、その会社が聖人にすら登りつめるように思う。しかし、その輝きの裏側を覗くと、実際にはそれほどのことはないことが判る。
あなたがしていることを実際以上に見せたり、あなたが”期待する”または実際にまだ達成していない結果について語ってはいけない。
私を信じなさい。あなたの顧客全員が正直さと透明性を高く評価するでしょう。
あなたの会社やプロジェクトがCSRを通じて世界を変えるとは期待されていません。あなたがその可能性を示したり、あるいは更に悪いことには実際に変えているという言葉遣いを使ってはなりません。
偽りのない努力と本当の結果を伝える言葉こそ最も効果があるメッセージです。

2. 貢献者に敬意を表さない

驚くことに、CSR広報の中には、読んでみると会社以外の人がプロジェクトを成功裏に導くことに何も関係していない、つまり会社が全て単独でやったと思えるようなものがある。
貢献者に敬意を表しなさい。気前よく。 そのほうが全ての点ではるかに良い(そして恐らくはるかに正直でもある)。
コミュニケーションにおいて可能な限り、そのプロジェクトや作業に関係した全ての人の働きを認めて感謝しましょう。報告書、プレゼンテーション、非公式な会話、会社の中でも外でもこれをすることです。
CSRにクレジットを付けること(貢献者に敬意を表すこと)は、ゼロサムゲームではありません。他の人にクレジットをシェアしても、あなたのクレジットが減るわけではありません。結果、より多くなることもあります。そしてパートナーは一層喜んでやる気になるでしょう。

3. 問題点やステークホルダーでなく会社に焦点を当てる

CSRは会社の関心事に関わりますが、会社そのものにはそれほど関係ありません。それはビジネスが社会と接点を持つ空間領域に関することであり、株主や社会にとって価値がいかにして創出される(あるいはされない)かに関することです。
それにもかかわらず、CSR広報がまるで会社の広告のように聞こえることをしばしば見聞きします。
もちろん、会社の関心事に焦点を当てることはOKです。しかし、もっと問題点や、ステークホルダーやパートナー、そして問題に取り組むまたは解決する努力全体に焦点をあてなさい。
もし人々がいかにあなたの会社が素晴らしいかもっと知りたいならば、彼らは問い合わせてきます。あなたから自主的にそうする必要はないし、あなたのCSR広報の重要なメッセージから効果を減じる必要はありません。

4. 懸念や欠点、異なる意見を認めない

飾り立てたコミュニケーションを使って、見せかけでCSRの直面する問題や欠点を覆い隠そうとしてはならない。
もしあなたのCSRプロジェクトが現状では大失敗のようであるならば、解決を試みなさい。見栄え良く取り繕ってはいけない。
人生は複雑だ。問題も複雑だ。これを受け入れ、自分のコミュニケーションでそれを偽装しょうとしてはいけない。
誰もあなたがパーフェクトであることを期待していないし、全てのことに答えを持ち合わせているとは期待していない。
しばしば、オープンに懸念や欠点、異なる意見を認めることで、あなたのメッセージをより信頼できるものにすることができ、対話とエンゲージメントを促進するのに役立ちます。

5. 複雑すぎる

もしもCSR広報を簡単に読んで理解できるものにできないならば、自分のプロジェクトと仕事を見直したほうがよい。おそらくプロジェクトそのものがあまりに込み入っていて複雑すぎるのだろう。


覚えておきなさい。CSRはシンプルだが、簡単なことではない。シンプルなことに焦点を当て続けなさい。
CSR広報をやっていて行き詰まったら、以下のような質問を投げかけなさい。

  • CSRプロジェクトは誰の利益になるのか。
  • なぜその人達にとってそれが重要なのか。
  • なぜ社会にとってそれが重要なのか。
  • 誰が我々を手助けしてくれているか、そして彼らは何をしているか。
  • 我々は既に何を本当に成し遂げたのか。
  • 我々はいかにしてそれを成し遂げたのか。
  • なぜ会社はそのことに投資をしているのか。
  • 直面する困難と問題は何か。

これらの質問に対する答えのどこかに、シンプルで簡潔な、謙虚で情報に富むコミュニケーションが存在する。それはあなたの会社とステークホルダーに価値を創出するか、または価値を維持することができる。

もし複雑さを回避できないならば、もう一度戦略を見てCSRがどんな状況か見つめなおしたほうが良い。なぜなら、おそらくそれは複雑すぎるからであろう。

一歩下がって新鮮な目でそれを見つめようとしてみるか、あるいは経験豊富な人達を集めて新鮮な目で素早くレビューしてもらう事を検討しなさい。それこそがあなたができるCSR投資に対する最高の報酬となるかもしれない。

6. 会社の動機を公に認めない

もしもあなたが利害を持たなければ、コミュニケーションが正直で透明性があるようには思いがたい。

あなたの会社は世界を救うために存在しているのではない。そうだと装うこともしてはならない。とにかく誰もあなたを信じないでしょう。

あなたの会社は株主に奉仕するために存在する。それは実際に法律で定められている。

株主に奉仕するプロセスにおいて、社会にも奉仕することができる。しばしばCSRプロジェクトや活動を通じてである。これこそがあなたが伝えたいことである。

あなたは自分らの利害を隠す必要はないし、誰も信じないような利他的な動機を隠れ蓑にしようとする必要もない。

あなたとステークホルダーにとってそこに何があるかオープンでありなさい。そうすれば残りのメッセージはより一層信用できるものになる。

7. 防御的でありすぎる

時には最良のCSRプロジェクトは、率先して活動家に反応することであったり、より大きな問題に応じることである。

時には、会社はこれらの問題で間違った側に立ったり、間違った側にいると思われたり、あるいは単純に本当にひどくめちゃくちゃにしてしまったりするものだ。

CSR広報があなたの立場や状況を防御することになってしまわないようにしなければなりません。それには直接対処することです。

あなたのCSR広報は、上述した5番目のポイントで問いかけた質問に関するものにしなければなりません。あなたのビジネスと社会との接点で何が起きているか、ストーリーを伝えるものにするのです。

もしも防御的でありすぎると、そしてしばしば少しだけ防御的であることでさえ防御的でありすぎることになるもので、残りのメッセージは行き場を失ってしまう。

8. 売り込みが多すぎて、シエアが足りない

当然あなたは、CSR広報があなたの会社や評判の源泉、その他の資産を支持して助長するものであって欲しいと思うでしょう。

しかし、しばしばその有効性はCSRストーリーを単純にシェアするだけで、会社のストーリーをあまり売り込まないほうがより効果的である。

もしもあなたの会社がCSRを通じて良い仕事をしているならば、それを叫ぶ必要はないのです。

単純にCSRストーリーをシエアすること、全ての貢献者に敬意を表すクレジットを付けて仕上げれば、それがあなた自身のメッセージを伝える最大にして最も効果的な方法です。

9. 事実ばかり多すぎて、ストーリーが足りない

もちろん、あなたはデータや詳細をある程度入れたいでしょう。しかしあなたは人々にストーリーを伝えることもすべきです。あなたが何を伝えて誰にそれを伝えるのか、そのバランスに見合うように両方を混在するようにします。

それからもし、より多くの人に広げ、部数をさらに伸ばし、より信頼性があるように見られたいならば、第3者に事例研究を実施してもらって、特に彼らが適切な発行プラットフォームを持ち合わせている場合にはその研究を発表してもらう事を検討しなさい。編集権のコントロールを多少失う事にはなるが、追加的に信頼性と発行部数を増大することで得られることは大きい。

第3者がCSRの領域に明るい人達ならば、戦略と実行に関するフィードバックも得られることが期待できる。

10. タイミングが悪い

時には黙っていることが最良のコミュニケーションである。単純に結果自体が物語るままにしておけば良い。たとえ広まるのに時間がかかろうともだ。

これは、会社あるいは問題をめぐる論争が激しい場合に起こりうる。このような状況では、コミュニケーションは簡単に炎上しやすい。それは反対を誘発する触媒の役割になりうるし、結果的にCSRのメッセージが論争と騒音にかき消されて行き場を失う事になりかねない。

私が南アフリカのPlacer Dome鉱山会社の顧問をしていた時、彼らは大きな論争の最中に信じられないほど野心的で遠大なCSRプログラムをぶちあげた。その論争で、彼らは法廷で鉱山労働者全国組合と相対することになり、南アフリカのワースト企業と呼ばれることになった。

この最中に、この会社は数百万ドルを費やして大々的で野心的なCSRプログラムを実施した。このプログラムは結果的に南アフリカの鉱山産業の社会的側面を変革する事に貢献したと賞賛された。

この会社はステークホルダーからプレッシャーを掛けられ、公衆からの批判に耐えながらも、そのCSRプログラムに関して不必要な公共コミュニケーションを出す事を拒んだ。

世界に向けて何が計画されているか伝えたい誘惑にかられたが、彼らは公には無言で通した。プロジェクトが結果を達成し始めてからもなお、無言を貫いた。

もし我々が公に討論を口にすれば、問題になることが我々には分かっていた。他の関係する現場で会社と公に戦っている人々が、CSRプロジェクトの公共的側面に戦いをもたらすことになり、成功はより一層難しくなるであろう。

我々は黙ったまま結果が蓄積されていくままにしておくと、やがて我々のパートナーがその結果を伝え始めた。これが実際に会社とプロジェクトにとって信じがたいほど公共的でかつ販売促進となるプロフィールにつながった。

遂にはそのプロジェクトと会社はグローバルな人気を得て、多くの名声ある賞(Stanford Social Innovation Review誌の事例研究はこちら)を受賞した。もし我々が早過ぎる時点でコミュニケーションしていたら、プロジェクトが生き残れたか私には自信がない。

11. あまりに退屈すぎる

それを面白くて楽しいものにしよう。

あなたは良い仕事についてコミュニケーションしていて、善き利益を増進する手助けをしている。それを生き生きと活気づかせよう。

写真やビデオやグラフィックを使おう。プロジェクトはしばしば実際の人々と状況に関することだ。それをやり遂げよう。ストーリーを語るのだ。

あなたの会社とステークホルダーとパートナーがそのプロジェクトにもたらしたエネルギーを人々に感じさせるのだ。

もちろん、時にはあなたには会社のコミュニケーションガイドラインがあって、息苦しくて何も引き出せないように思えるだろう。だがもしあなたにインターナルコミュニケーションを見張る警官がいるなら、コミュニケーションを退屈にさせないために彼らから逃れて何かを持ちだすことを恐れてはいけない。結局のところ、最初のCSRプロジェクトは全ての適切な内部承認を得ていたと思いますか。

この記事のオリジナルはLinkedIn Pulseに掲載された。ここに承諾を得て再掲載した。

ウェイン・ダン

ウェイン・ダンは25年以上にわたりCSRプロジェクトでシニアレベルのグローバルな経験を持ち、戦略コンサルティングと直接的な現場導入の双方を含む、多様で幅広いセクターの産業で経験がある。彼はCSR Training Instituteの社長兼創業者、McGill Universityの「CSR実践」の教授。

掲載:特集記事、特集、2016年7月 タグ:CSR、CSRコミュニケーション