カスタマー・エクスペリエンスがマーケティングでホットな新しいことである理由

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2016年4月6日 パム ニーリー
「カスタマー・エクスペリエンスは次の競争の戦場だ」 ――ジェリー・グレゴワール、元デル社およびペプシ社CIO

ビジネスにおける競争は激しい。誰にも言われる必要はない。どこでも企業は、商品、テクノロジー、価格に基づいて競い合っている。広告においてさえ、マーケティングメッセージを声高に叫ぶ競争で敵を打ち負かす方法としてコンテンツマーケティングの隆盛が見られる。

Credit: dotshock / 123RF Stock Photo

競争には別のやり方がある。古いやり方だが有効なのだ:あなたの顧客に良くしてあげること。本当に、本当に良くしてあげることだ。最初にその顧客があなたと出会った時から、何年も後にロイヤルなリピート顧客になってくれるまでずっと良くしてあげることだ。

そのような全体的な見方が――顧客に保証することは顧客が購買サイクルのどのステージにいようとも常によく受け取られる――理想のカスタマー・エクスペリエンスの中核となる。

もちろん、これは何も新しくない。そして最近になってさえ素晴らしいカスタマー・エクスペリエンスが成し遂げようとすることを表す新し目な言葉がいくつか見られるようになった。

“顧客中心主義”の会社というのを耳にしたことがあるだろう。カスタマー・アドボケイトはどうか。Amazon.comの全ての会議では空席の椅子が置かれていることを聞いたことがあるかもしれない。空席の椅子はカスタマーを象徴しているのだ。そこに置かれているのは、決定事項は全てカスタマーの利益になるようにすることを表明し宣言するためだ。

それは素晴らしいカスタマー・エクスペリエンスを創り、確実に維持していくための正しい考え方だ。

素晴らしいカスタマー・エクスペリエンスを提供するのは良いビジネスだ

企業がカスタマー・エクスペリエンスを取り入れているのは、単にかわいい新しいマーケティング用語であるからではない。あなたの顧客を喜ばせることは、ビジネスにおいて強固な利点が存在する、以下はほんの数点:

  • 誰かが良いカスタマーエクスペリエンスを持てば、それだけその人は友人や家族や同僚にあなたの会社のことをよく言うことが期待できる。この口コミマーケティングは今ある中で恐らく単独で最も有効なマーケティングチャンネルであろう。
出典:SurveyMonkey調査とブログ投稿「なぜ素晴らしいカスタマーサービスは価値が有るか」

「とても良い」または「素晴らしい」カスタマーサービスを経験した後、あなたはどのくらいの確度で友人や家族や同僚に教えるでしょうか。

  • もし誰かのカスタマー・エクスペリエンスが良かったとすれば、あなたのオンラインサイトについて良いレビュー投稿を残してくれるかもしれない。こうしたレビューは、あなたのビジネスタイプによっては、ビジネスを生かしたりあるいは壊すことができる。その反対に、誰かがあなたの会社ととても不愉快な経験をしたとすれば、あなたのビジネスに多大な影響を与え得るレビューを残すかもしれない。
  • ハッピーなカスタマー――良い経験をした人達――は、周りに居続ける。より長いことあなたのそばにカスタマーをキープすることができれば、彼らの生涯価値はより高まることになる。生涯価値が高いことはビジネス上あらゆる種類の素晴らしい効果をもたらす。新規カスタマー獲得に支出できる額だとか、あなたの会社が正味でどれくらい利益を生み出すことができるかなどです。
  • 下の図表はWatermark Consultingからのもので、良いカスタマー・エクスペリエンスはあなたの会社の株価さえも少しだけ、あるいはすごく上がる事を示している。
出典:2015年カスタマー・エクスペリエンスROI調査

カスタマーエクスペリエンスのリーダーはマーケット平均上回る業績

8年間の株価業績をカスタマーエクスペリエンスのリーダー、最下層、S&P500(2007-2014)

リターン(利益)合計累計

⇒リーダーはマーケット平均を上回り、S&P500インデックスよ35ポイント高いリターン合計だった。

⇒最下層は相当引き離され、マーケット平均より45ポイント下回ったリターン合計だった。
  • 良いカスタマー・エクスペリエンスは、ソーシャルメディア上でカスタマーがあなたに反応する可能性を切り開きます。そのようなユーザーが創り出すコンテンツは、あなたが得られる最高のアーンドメディアです。

あなたの顧客の経験はあなたの商品の一部であり、市場で差別化する方法である

カスタマー・エクスペリエンスに今年フォーカスする理由がもう一つあります。あなたとの顧客の経験が、あなたの商品と同じように重要になってきているからです。

またカスタマー・エクスペリエンスは、あなたの競合とあなた自身を差別化する方法でもあります。ガートナー調査によれば、「調査した会社の89%が2016年までに主にカスタマー・エクスペリエンスに基づいて競争するよう計画しています」。

このクラッシックな例には、ホテル業界があります。皆さんご存知のように、リッツカールトンに泊まるのとMotel 6に泊まるのとでは全くの違いがあります。もちろん、両者ともベッドを提供してくれます。両者とも予約を受け付けます。彼らは朝食と呼ばれるものを提供してもくれます。しかし全ての類似点はここまでです。(Motel 6を責めているのではありません。犬の同伴を受け入れてくれて感謝します!)

カスタマー・エクスペリエンスは商品や値段と同等に重要です

以下はIBMとEconsultancyによる共同調査レポート「消費者の会話」の結果です:

Q: あなたが新しい業者が提案した結果切り替えたことは何ですか? 古い業者がどんな間違えをしたのか、最も当てはまる表現は以下の内どれですか?

出典: IBMとEconsultancyによる「消費者の会話」
30%が古い業者が失敗したと回答
59%が新しい業者は何か改善されたものを提供してくれたと回答

これはこのブログで我々がかつて言及した別の研究と符合する。Sherry Lamoreauxの投稿「B2Bマーケティングにおける感情の役割:ストーリーを語り、売り上げる」の中で、彼女はCEB/Motistaの研究を引用し、人々が喜んでより高い値段を払うのは購入に個人的な価値を見い出す時であると紹介した。これが良いカスタマー・エクスペリエンスのカギとなる視点だ――それは顧客を気持ちよくすることだ。それらが企業への肯定的感情を発生させるのです。それらが信頼を創り出すとさえ言ってもいい。

カスタマー・エクスペリエンスはあなたのビジネスの全ての側面の一部である

以下は、ビジネスにおいてカスタマー・エクスペリエンスが現れ得る(そして現れるべき)様々な場です:

研究開発

あなたの今の顧客は、あなたの商品をそして他の商品をどの様に使っていますか。何か困っていることはありませんか。彼らは問題を解決しようとしてどこに行って、どのようにその問題を表現するのでしょうか。

コンテンツマーケティング

カスタマー・エクスペリエンスとコンテンツ・マーケティングは共に固く織り込まれています。しかし私はカスタマー・エクスペリエンスのほうがコンテンツ・マーケティングより大きな問題だと言っておきます。なぜなら単純にカスタマー・エクスペリエンスはここにリストした他の部門全てを含んでいるからです。ですので、コンテンツマーケティングはカスタマー・エクスペリエンスの一側面に過ぎません。

ソーシャルメディア

カスタマー・エクスペリエンスの文脈で言えば、ソーシャルメディアはカスタマーサービス機能であり、コンテンツマーケティング機能でもあります。カスタマーが無料通話経由で助けてもらえず、止むを得ずTwitterやFacebookに行くと数分の内に問題が解決したという話は沢山聞きます。

1つの話の例です。一人のマーケティング担当者は、車内が暑すぎるAmtrak列車で旅行中でした。その列車内では誰にも助けてもらえなかったので、やけになってTwitterのAmtrakアカウントに対して息苦しい暑さをツィートしました。数分でツィートによる返事が来て、車掌に連絡取れるよう試みると言いました。そして実際そうしたのです!その人が乗っている車両のエアコンがONになりました。

広報

あなたの会社は、上の例のようにビジネス上の義務をはるかに超える善い行いをしていますか。そのような行動を伝えることで、とても肯定的な光を当てる事になります。多くの顧客は、お金儲けを超える使命を持つ企業を真に評価します。このような企業の例は、ミッションステートメントに「オーガニック」や「持続可能な」という表現を用いている企業の殆どどの企業にも当てはまります。あるいは、利益の1パ―セントを事業に関わるチャリティやコミュニティーに寄付している企業もそうです。アウトドア用品のREIやPatagoniaがそうです。
REI 11/22/2015 Instagram投稿者でREI社員のルイス・ファリグは、感謝祭翌日のブラック・フライデーには、クリスマスの買物で長い列に並ぶより、外に出かけて雄大な景色を眺めにいくことを選びます。

ウェブサイトのデザイン

カスタマー・エクスペリエンスをウェブのデザインと関連付ける記事は数多くあります。アプリのデザインや他のユーザーインターフェースも同等に重要です。

これまでにコンピュータにフラストレーションを経験している人なら誰でもよく判ることです。私もかつてAOLの重役から、初期に爆発的に上り詰めた理由をこのように説明されました:「使いやすさが秘密のソースです」

パーソナライゼーション(個人の好みに合わせること)もウエブサイトに優れたカスタマー・エクスペリエンスをもたらす大きな役割を果たします。カスタマー・エクスペリエンスのトレンドに関する最近の記事の多くが、パーソナライゼーションが今のトレンドで最強だと指摘しています。それは自動化に相伴って使われます。

モバイルからのアクセスと使い勝手

ウェブサイト以外のことを考えてみましょう。デスクトップによるデータ通信量よりもモバイルからの方が多いですし、その状況になってしばらく経ちます。これは、最低限あなたのウェブサイトがモバイルにとって使い易くあらねばならないことを意味します。各フォームは機能する必要がありますし、他の業務遂行上(注文?計算?カスタマーサポート?)必要な機能もうまくできていないといけません。カスタマー・エクスペリエンスには、多くの部分、チャンネル連携(オムニチャンネル)マーケティングを必要としますし、実際多くの企業がそれに努めています。ですので、モバイルについて考えたら直ぐにビデオについて考えましょう。そして次は店内マーケティングです。

カスタマー・エクスペリエンスにとってインターフェースやプロダクトデザインは非常に重要なので、IT部門は他のどの部門と同等に重要な役割を果たします。たとえ彼らが直接カスタマーと話すことは決してなくてもです。

営業部スタッフは、基本的にカスタマー・エクスペリエンスの最前線の使者です。LinkedInで最初にコンタクトを取る時から、初めて実際に見込み客と会う時も、彼らは会社の顔になるのです。彼らそのものがカスタマー・エクスペリエンスなのです。

販売後、カスタマーサービスの成功例

Accenture社の2015年B2Bカスタマー・エクスペリエンス調査によれば、カスタマー・エクスペリエンスのリーダー群は、平均より高い売上成長を達成する一方、そのうち卓抜して優れているのは25%にも満たない。リーダー群の企業は、サービスを成長の貴重な糧にまで高めると調査は指摘している。下の図は、いかにリーダー群企業が販売後のサポートとサービスを優先しているか示すものだ。
出典:Accenture社の2015年B2Bカスタマー・エクスペリエンス調査
図6. レベル別に見るカスタマー・エクスペリエンスをマスターする重要度:リーダー群vs.平均群(”とても重要”の%)
リーダー群:
平均群:
下層群:
学習、発見と検討  評価、規制、購買  採用、納品   販売後のサポート  販売後の展開   コンタクト停止  アカウント管理継続

人事と従業員エンゲージメント

社内の従業員の態度はどうですか。カスタマーのことをどの様に話していますか。不平を言ったり無視したりしていませんか。それはどこかに出てくるものです。これはまた、従業員の士気がソーシャルメディアにも反映してくるので重要な事です。さらにより重要な事には、不満を持つ従業員は、ハッピーな従業員がするような質の良い(量も多い)仕事をしません。

これはまた逆にも働きます。あなたの働く会社がカスタマーの取り扱いがひどいことを知ることほど、従業員の士気に悪影響なことはありません。このようなことでは、従業員は辞めていきますし、いい従業員ほど早く辞めていきます。

払い戻しであろうと請求であろうと、経理部がカスタマーにどれほど良く対応するかによってカスタマーの好意に与え得る影響は計り知れません。

重役チーム

カスタマー・エクスペリエンスは非常に重要なので、B2B企業のカスタマー・エクスペリエンスのリーダー群企業の59%が経営幹部レベルに専任担当重役を置いています。

何が素晴らしいカスタマー・エクスペリエンスをもたらすのか

それはあなたの会社と聴衆による所が大部分です。例えば、ミレニアル世代は、カスタマーサポートではより自分自身で解決することを好むかもしれないが、ベビーブーマー世代は、電話の相手に実際に人が対応することを望むでしょう。さて以下は、世界中のカスタマーが質問に回答した内容です:

MarketingCharts.com データ元:エコノミスト諜報ユニット
理想のカスタマー・エクスペリエンスで最も重要な要素  2015年4月
世界中の18歳から65歳2,403人の消費者調査結果

「理想のカスタマー・エクスペリエンスを考えた場合、以下のどの要素がもっともあなたにとって重要ですか。3つまでお選びください」

質問不平への迅速な回答 47%

購入プロセスのシンプルさ 47%

注文状況のリアルタイム確認 34%

商品情報が各チャンネルに渡って明瞭・シンプル 25%

複数チャンネルで会社と連絡やり取りできる(対面、eメール、オンライン、モバイル、電話) 22%

テクノロジーを使って店内でより詳細な商品情報にアクセスできる  18%

24時間休みなく複数チャンネルで会社と連絡やり取りできる 14%

複数チャンネルどこでも一貫した商品情報 14%

自分の好みに応じた提供やお薦めでよりパーソナライズされたエクスペリエンス 12%

購入後にも継続する会社との関与 10%

各種媒体チャンネルで示された自分の好みに応じてカスタマイズされた提供内容 7%

会社の各チャンネル担当が一貫して自分をレギュラー顧客として認識すること 7%

クリエイティブの画像イメージが各チャンネルで一貫していること 4%

その他 1%

分からない 3%

上記リストで6つの要素でいかにチャンネルに言及しているか留意されたい。チャンネル連携(オムニチャンネル)マーケティングは、既に素晴らしいカスタマー・エクスペリエンスに必要な要素となっている―少なくてもカスタマーの目から見るとそうなる。

カスタマー・エクスペリエンスは、中身の無いバズワードではない。それはカスタマーの生活サイクルの見方であり、強力であるが故に会社を差別化し、株価を急騰させ、従業員が辞めずに採用を魅力的にし、ROI(投資利益率)を劇的に増大させるものだ。

残念ながら素晴らしいカスタマー・エクスペリエンスを構築するのに近道は存在しない。それは会社のプロセスに密接に組み込まれているので、事業に当たる者は皆関わって、その努力をする必要がある。しかし機敏にもそれに向けて動く会社――あるいは既に動いている会社――にとっては、報酬は努力に値するほど大きい。

この記事は元々ActOn社の Marketing Action blogに掲載された。許諾を得てここに再掲載した。

Pam Neely

パム ニーリー

パム・ニーリーは、熱心なeメールおよびコンテンツマーケティングの信奉者で、出版とジャーナリズムの経歴を持ち、ニューヨーク新聞賞を受賞している。New York UniversityでDirect and Interactive Marketingで修士号。Twitterのフォローは@pamellaneely

2016年4月掲載  タグ: コミュニティー&カスタマーエンゲージメント、カスタマー・エクスペリエンス