IABC JAPAN International Association of Business Communicators.

Engaging Employees as Brand Ambassadors ― IABCワールドカンファレンス・レポート(2)

2013年8月13日 | shimodaira | Member blog

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下平博文
IABCジャパン理事(花王株式会社)

IABCワールドカンファレンスのレポートの続きです。
カンファレンスは日曜日の朝から水曜日の午前中まで、今年は6月23日~26日の3日半の日程で約80のセッションが開催されました。全体セッションと幾つかのクラスに分かれて参加するものがあり、当然ですが全てのセッションを聴講することはできません。各自の関心にあわせて会場を渡り歩くことになります。私の仕事のテーマは企業理念の社内における活用にあるので、自ずと社内コミュニケーションのセッションを選ぶことが多くなります。実際に参加して面白かった、参考になったと素直に思える場合とそうでない場合があり、多少の当たり外れは仕方ないですね。

今回は、そのなかから“Engaging Employees as Brand Ambassadors”というセッションを紹介したいと思います。いうまでもなく、私にはたいへん参考になったものです。タイトルを日本語にすると 「ブランド特使として従業員との絆を深める」 といったところでしょうか。特使とはいかにも特殊な日本語ですが 「ブランドの代表」「体現者」「顔」 とか訳してもいいのかもしれません。

プレゼンターは、カナダのメリディアンという信用組合(Meridian Credit Union)のコーポレート・コミュニケーションの責任者(Vice President)を務めるスコット・ウィンゾー(Scott Windsor)という男性。朗々と響き渡るバリトンが印象的でした。最初にメリディアン信用組合のプロフィールです。

■ 2005年に地元の二つの信用組合の合併で生まれた新しい会社
■ 組合員は25万人以上
■ オンタリオ州では1番、カナダ全体でも3番目に大きい信用組合
■ 従業員は1千人プラス

語られたのは、この新しい組織のコーポレート・ブランドをインターナル、つまり社内からどのように築いていったかというストーリーです。活動のプログラムは大きく次の4つ枠組みからできています。

■ ブランド認知(Brand Awareness)
■ ツール/プラン/プロセスの統合(Tool/Plan/Process Integration)
■ 組織文化と従業員の日々の行動(Reinforce Culture/Behavior)
■ パフォーマンスの継続的な評価、測定(Performance Metrics/Tracking)

先ず取り組んだのが、【ブランドの明文化】です。それは次のような組合員への約束として表わされています。
「組合員への約束:私たちは積極的で真摯な組合員のパートナーとなります。そのためには個々の組合員に配慮された卓越したサービス、組合員でいることのメリットを提供し、地域企業の特性を生かしていきます」
“Our Promise To Members: We will a proactive, genuine partner through Superior, personalized service/Benefits of Membership/The difference of being local.”

そしてこの「組合員への約束」を、紙の社内報やイントラネットで繰り返し従業員に伝え、植えつけていきます。

次は 【ブランドガイドラインの作成と配布】。ロゴの使い方などを記述した、よくあるブランドブックのようですが、それまでメリディアンには標準的な声や見え方(voice & look)がなかったので、ブランドの言語(language)に一貫性を持たせるために作成したとあります。全従業員に配布したとのことです。

そして次のテーマは 【日々の行動をブランドに合わせる】(Align Behavior to Brand)こと。人事部門との強力なパートナーシップで、ブランドにふさわしい行動の基準をつくり、それを採用や実績評定に取り入れる、新しい表彰制度を導入するなどの仕組みを構築しました。この人事と連携したという点がポイントですね。表彰制度の一つとして新しくイントラネットに ”iApplaudu@Meridian” というポータルを設け、年次表彰とともに、従業員同士が互いに認め合う機能ももたせて、非常に活発に活用されているということでした。

また全体と通じて【ツーウェイ・コミュニケーションの重視】という考えを維持したという説明もありました。

そして 【Employee Engagementの評価、測定】 をするために、調査会社ギャロップ社に依頼して2007年より年に一度の従業員の意識調査を実施しているとのこと。その数値は、年々向上しているとのことでした。

まとめとしてEmployee Engagementのメリットとして次の三点があげられました。

■ 優秀な人材の採用と、引き留め
■ 従業員の間に信頼感を醸成し、相互の協力を促す、これは階層に関わらない
■  しかし、最も重要なのは組織の生産性をあげ、利益を押し上げること

そして、活動を推進していくうえでのポイントとして次の二点があげられました。

■ 社内でブランドを活性化することにより、従業員を鼓舞し、それによってカスタマーである組合員にブランドの約束を果たすことができる
■ こうしたことは、ひとり人事やコミュニケーション、マーケティング各部門単独の力でできることではない、それにもましてリーダーの役割が重要である

以下、プレゼンテーションを聞いた者として感じたことを記します。ここに説明された内容は、ブランドの明文化、それを繰り返し伝え従業員と共有する、体現した行動を共有する場をつくり、評価などの人事制度と整合を図る、毎年測定をして変化をみるといった極めてオーソドックスなやり方です。P-D-C-Aのサイクルですね。そこには、特に変わった手だて、いわゆる妙案、奇策の類はありません。むしろ、「定石(じょうせき)」を過たずに踏んでいる“だけ”ともいえるでしょう。そうなのですね、私たちはこうした会場に足を運ぶと、なにか目が醒めるようなプレゼンをついつい期待してしまいます。しかし、コミュニケーションの仕事はこうした定石ともいえる施策をきちんと積み重ねていくことこそが重要である――あらめて、しみじみとそう思いました。

IABCでは、コミュニケーションの「目的」は、受け手の行動を変えること(Change Behavior)というのが常識、というか前提になっています。しかし、その意味は、決してコミュニケーションだけでそれが成し遂げられるというようなものではありません。この例でもみられたように、人事、マーケティングなどの他の機能、そしてとりわけ経営陣と力を合わせなければ達成されないことです。したがって、「目的」を受け手の行動変化(Change Behavior)におきつつ、コミュニケーションが担うべき役割は何か、そして他の機能とどのような協力・連携していくのか、それを設計することが非常に重要だと思いました。コミュニケーション戦略の重要な側面ではないでしょうか。

このセッションの本部からの紹介は下記のアドレスにあります。
http://wc.iabc.com/sessions/engaging-employees-as-brand-ambassadors/

また、Meridian Credit UnionのHPはこちらです。
http://www.meridiancu.ca/Pages/welcome.aspx

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